第8回研究会「未来を実装する:テクノロジーの社会実装について」

4月27日(水)15:15〜17:00  ※開催時間が他日程と異なります。

講師:馬田隆明氏(東京大学 FoundX ディレクター)

https://takaumada.com/

世の中に広がるテクノロジーと、そうでないものは、なにが違うのでしょうか。私たちは、科学技術によってどのように社会を変えていくことができるのでしょうか?講師の馬田氏による著書、『未来を実装する』(2021年)をベースに、社会の変え方のイノベーションについて語り合います。 

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「未来を実装する」には、テクノロジーを受け入れることのできる社会の存在が必要なのだということが、講義の一番のメッセージだと理解し、それは改めて大事であると思った。最新技術の導入においては、その有用性ばかりに目が行きがちであるが、問題も想定される。それに対して、社会におけるルール整備が追い付かないこと、そして議題には上がらないが水面下で問題になっており、何か事件が起きないと発見できないということも推察される。
このようにテクノロジーは有用である一方で、時に人に害をもたらしうる。その危険性を認識するために、理系の研究者であっても文系的な知識の理解が必要となるだろう。そして文系の研究者も、どのようなテクノロジーが開発されているのかを意識し、それが社会にどう実装可能なのかを事前に考えること必要がある。それは、開発し導入されて初めて、それが社会にどう影響していくかを考えるのでは、取り返しのつかないことに発展しかねないからだ。何か問題が起こる前段階で、法を整備することや、人々から理解を得る体制が必要に思う。
上記の達成には、文理に関わらず、学問間の協調が必要だ。テクノロジーの開発段階から、文系の研究者と協議を重ねる中で、社会に求められるテクノロジーのあり方を模索しながら、研究をしていく体制が必要だ。今までは、学問間での交流が少なかったように感じる。自分自身も積極的に理系分野の知識を得ようとしていなかった反省はある。学問領域を横断する重要性に改めて気づくことができ、この授業に大きな意義を感じた。「未来を実装する」には、研究機関の変革も必要なのかもしれない。
人も変わらなければならないという言葉も出てきた。より良い生活を目指し、テクノロジーを社会に実装させるには、確かに人も変わらなければならない。しかし、アップデートしたくない人、したくてもできない人の存在もある。テクノロジーに適応することが絶対視され、強制的にアップデートされることの危険性も認識する必要はある。既存の慣れ親しんだものの良さをそぎ落とすよう迫られ、技術発展に順応できない人々が社会から取り残される。そのような可能性も文理双方の研究者が協議し、技術を実装する前に対策を考えなければならないだろう。私自身も、社会において日々進化する技術に目を向け、それがどう社会に影響するのか、思いを巡らしていく。

地球社会研究専攻修士課程 長澤涼人